「よく噛んでください。」
歯科医院でも、健康の話でも、よく耳にする言葉です。
もちろん、とても大切なこと。
でも、
「よく噛まなきゃ。」
そう思っていても、なかなかできない。
そんなことはありませんか?
私も歯科医師として、「よく噛んでくださいね」とお話しすることがあります。
でも、分かっていても、毎日の食事で意識し続けるのはなかなか難しいものです。
そんな中、あるとき何気なく、
「よく味わって食べてみてください。」
と伝えてみました。
すると、こちらの方が反応がよかったんです。
「味わってみてください」と言ってみたら
味わおうとすると、自然と食事がゆっくりになる。
食事がゆっくりになると、噛む回数も増えていく。
そして、食べ過ぎにくくなる。
「よく噛まなきゃ」と頑張らなくても、
味わうことを楽しんだ結果として、自然とよく噛めていた。
それなら、この方がずっと続けやすいのではないかと思いました。
味わうのは、「味」だけじゃない
「味わう」と聞くと、甘い、辛い、酸っぱい……そんな味を思い浮かべるかもしれません。
でも、食事を楽しむ要素はそれだけではありません。
シャキシャキ。
サクサク。
もちもち。
コリコリ。
食感を楽しむことも、味わうことのひとつ。
噛んでいるうちに広がってくる香りもあります。
温かいものを口にしたときの、ほっとする感じもあります。
「この野菜、いい食感だな」
「噛んでいたら、こんな味がしてきた」
そんなふうに食べていると、「何回噛んだか」を数えなくても、自然と口を動かしています。
食事そのものを楽しむことが、結果として「よく噛む」ことにつながっていくんですね。
早食いが気になる人にも
ついつい早食いになってしまう人にも、「味わう」は使えます。
「ゆっくり食べよう」
そう思って食べ始めても、気がつけばいつもの速さに戻ってしまう。
それなら、「ゆっくり」を目標にしない。
「今日は、この食感を楽しんでみよう。」
シャキシャキしている?
やわらかい?
噛んでいるうちに味は変わる?
そんなことに意識を向けていると、自然と食べるペースもゆっくりになります。
「ゆっくり食べなきゃ」と頑張るより、こちらの方が少し楽しそうではありませんか。
食べ過ぎが気になるときも
食べ過ぎが気になると、
「量を減らさなきゃ」
と考えがちです。
でも、急いで食べていると、自分がどのくらい満たされているのかに気づかないまま、どんどん食べ進めてしまうことがあります。
ゆっくり味わっていると、
「おいしい」
だけではなく、
「そろそろ十分かな」
という自分の感覚にも気づきやすくなります。
だから、食べる量を気にする前に、
まずは味わってみる。
そんなところから始めてもいいのではないでしょうか。
「よく噛む」は、目的じゃなくてもいい
よく噛むことには、食べ物を細かくし、唾液と混ぜて飲み込みやすくする大切な役割があります。
また、噛むことは唾液の分泌にもつながります。
でも、だからといって、毎回「よく噛まなきゃ」と頑張らなくてもいい。
味を楽しむ。
食感を楽しむ。
香りを楽しむ。
そして、食べる時間そのものを楽しむ。
そうしているうちに、食事がゆっくりになり、自然とよく噛むようになる。
「よく噛む」は、頑張って達成する目的ではなく、味わった結果でもいい。
私は、そんなふうに考えています。
🌿 今日の小さな養生
次の食事で、ひと口だけ。
「何回噛もう」と数える代わりに、
「どんな味がする?」
「どんな食感?」
と、ちょっとだけ意識を向けてみませんか。
いつものご飯にも、今まで気づかなかった味や食感が見つかるかもしれません。
そして気づいたら、いつもより少しゆっくり食べているかもしれません。
養生は、頑張ることだけじゃない。
楽しむことから始めてもいい。


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