ゆるり薬膳部|食材図鑑 No.8 いちじく

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いちじく|秋の実りを、薬膳の視点から味わってみよう

夏の終わりから秋にかけて、店先に並び始めるいちじく。

やわらかな果肉と、ぷちぷちとした食感。

梨とはまた違ったところで、「秋が来たな」と感じさせてくれる果物です。

そのまま食べてもおいしいし、ジャムにしたり、サラダに加えたり。

薬膳の視点から見てみると、いちじくは秋の食卓に取り入れやすい、ちょっと面白い食材です。

今回は、旬のいちじくをゆっくり見てみましょう。


🌿 いちじく ひと目メモ

食材名:いちじく(無花果)
五性:平
五味:甘
帰経:小腸・膀胱・大腸・脾・胃
:秋
ポイント:薬膳では、腸を潤したり、脾胃をいたわったりする食材として考えられています
こんな日に:乾燥が気になる季節、お腹のすっきり感がいつもと違うとき、食欲がいまひとつのときなど
いつもの食べ方:生食、サラダ、ジャム、煮物、蒸し物、デザートなど

※五性・五味・帰経は、中医学・薬膳で食材の性質を捉えるときに使われる考え方です。


いちじくは「平」の食材

薬膳では、いちじくは**「平」**に分類されます。

「平」とは、温めるほうにも冷ますほうにも大きく偏らない性質のこと。

前回の食材図鑑でご紹介した梨は「涼」でした。

同じ秋の果物でも、薬膳の視点から見ると性質が違うんですね。

旬だからといって、どの食材も同じ働きを持っているわけではありません。

そんな違いを知るのも、食材図鑑のおもしろさです。


秋の乾燥は、喉や肌だけ?

秋の養生というと、

「乾燥に気をつけましょう」

とよくいわれます。

乾燥というと、まず思い浮かぶのは喉や肌かもしれません。

でも、なんとなくお腹がすっきりしない。

いつもより便が硬いような気がする。

そんな変化を感じることもあります。

薬膳では、いちじくには**「潤腸通便(じゅんちょうつうべん)」**という働きがあるとされています。

文字どおり、腸を潤して便通を助けるという考え方です。

だからといって、

「便秘だから、いちじくをたくさん食べよう」

ということではありません。

旬の食材のひとつとして、

今日はこんな果物を選んでみようかな。

そのくらいから取り入れてみるのがよさそうです。


お腹をいたわるという見方も

いちじくには、もうひとつ**「健脾益胃(けんぴえきい)」**という働きもあるとされています。

薬膳では「脾」と「胃」は、食べたものを受け取り、体に必要なものへと変えていく働きと深く関わります。

難しい言葉を覚えるより、

「薬膳では、いちじくをお腹との関わりからも見ているんだ」

くらいに考えておくとよいかもしれません。

夏の暑さで食生活が乱れたり、冷たいものが続いたり。

季節の変わり目には、そんな夏の食生活を少しずつ見直していきたいですね。


「肺を潤す」という働きも

今回参考にした薬膳の資料には、いちじくに**「潤肺止咳(じゅんぱいしがい)」**という働きも記されています。

薬膳では、秋は「肺」と関わりの深い季節。

空気が乾いてくると、喉などの乾燥も気になってきます。

梨にも「肺を潤す」という考え方がありましたが、いちじくにも潤いという視点があります。

ただし、同じ「秋にうれしい食材」でも、五性や帰経、働きは同じではありません。

梨か、いちじくか。

「どちらが体にいい?」ではなく、

今日はどちらを食べたいかな。

そんな選び方も楽しみたいですね。


いちじくって、本当に「花がない果物」?

いちじくを漢字で書くと、

「無花果」

「花のない果物」と書きます。

でも、本当に花がないわけではありません。

私たちが果実だと思って食べている部分の内側に、小さな花がたくさんついています。

外から花が見えないため、「無花果」という名前がついたとされています。

いちじくを切ったときに見える、あのたくさんの小さな粒。

いつもの果物にも、知らなかったことがまだまだありますね。


🥕 栄養のことも少しだけ

ここからは薬膳とは分けて、現代の栄養学からいちじくを見てみましょう。

いちじくには食物繊維やカリウムなどが含まれています。

生のいちじくと、乾燥させたドライいちじくでは、水分量が大きく違うため、同じ重量で比べたときの栄養成分やエネルギー量も変わります。

「ドライフルーツだから体にいい」とたくさん食べるのではなく、食べる量にも目を向けたいですね。

旬の時期には、まず生のいちじくをそのまま味わってみる。

そんな楽しみ方もいいと思います。


梨といちじく。秋の果物を楽しむ

みずみずしい梨。

やわらかく甘いいちじく。

どちらも秋に楽しめる果物ですが、薬膳での性質はそれぞれ違います。

梨は「涼」。

いちじくは「平」。

薬膳を知ると、

「秋にはこれを食べなければ」

ではなく、

旬の食材にもいろいろな個性がある

ということに気づきます。

スーパーに並ぶ旬のものを眺めながら、

今日は何にしようかな。

そんなふうに季節を楽しむことも、養生のひとつではないでしょうか。


🌿 今日の食卓で、一つだけ

いちじくを見かけたら、

今日はひとつ、旬の味を楽しんでみませんか?

甘さ。

やわらかな食感。

ぷちぷちとした種の感触。

「体にいいから」ではなく、

今しか味わえない季節のものだから。

そんな理由で食材を選ぶ日があってもいい。

季節をおいしくいただくことも、ゆるり養生です。


参考図書

この記事を書くにあたり、薬膳におけるいちじくの性質や働きについて、以下の書籍を参考にしました。

  • 辰巳洋 主編・日本国際薬膳師会 編『早わかり薬膳素材―食薬の効能・性味・帰経』源草社
  • 辰巳洋 主編『改訂新版 薬膳素材辞典―健康に役立つ食薬の知識』源草社

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