いちじく|秋の実りを、薬膳の視点から味わってみよう
夏の終わりから秋にかけて、店先に並び始めるいちじく。
やわらかな果肉と、ぷちぷちとした食感。
梨とはまた違ったところで、「秋が来たな」と感じさせてくれる果物です。
そのまま食べてもおいしいし、ジャムにしたり、サラダに加えたり。
薬膳の視点から見てみると、いちじくは秋の食卓に取り入れやすい、ちょっと面白い食材です。
今回は、旬のいちじくをゆっくり見てみましょう。
🌿 いちじく ひと目メモ
食材名:いちじく(無花果)
五性:平
五味:甘
帰経:小腸・膀胱・大腸・脾・胃
旬:秋
ポイント:薬膳では、腸を潤したり、脾胃をいたわったりする食材として考えられています
こんな日に:乾燥が気になる季節、お腹のすっきり感がいつもと違うとき、食欲がいまひとつのときなど
いつもの食べ方:生食、サラダ、ジャム、煮物、蒸し物、デザートなど
※五性・五味・帰経は、中医学・薬膳で食材の性質を捉えるときに使われる考え方です。
いちじくは「平」の食材
薬膳では、いちじくは**「平」**に分類されます。
「平」とは、温めるほうにも冷ますほうにも大きく偏らない性質のこと。
前回の食材図鑑でご紹介した梨は「涼」でした。
同じ秋の果物でも、薬膳の視点から見ると性質が違うんですね。
旬だからといって、どの食材も同じ働きを持っているわけではありません。
そんな違いを知るのも、食材図鑑のおもしろさです。
秋の乾燥は、喉や肌だけ?
秋の養生というと、
「乾燥に気をつけましょう」
とよくいわれます。
乾燥というと、まず思い浮かぶのは喉や肌かもしれません。
でも、なんとなくお腹がすっきりしない。
いつもより便が硬いような気がする。
そんな変化を感じることもあります。
薬膳では、いちじくには**「潤腸通便(じゅんちょうつうべん)」**という働きがあるとされています。
文字どおり、腸を潤して便通を助けるという考え方です。
だからといって、
「便秘だから、いちじくをたくさん食べよう」
ということではありません。
旬の食材のひとつとして、
今日はこんな果物を選んでみようかな。
そのくらいから取り入れてみるのがよさそうです。
お腹をいたわるという見方も
いちじくには、もうひとつ**「健脾益胃(けんぴえきい)」**という働きもあるとされています。
薬膳では「脾」と「胃」は、食べたものを受け取り、体に必要なものへと変えていく働きと深く関わります。
難しい言葉を覚えるより、
「薬膳では、いちじくをお腹との関わりからも見ているんだ」
くらいに考えておくとよいかもしれません。
夏の暑さで食生活が乱れたり、冷たいものが続いたり。
季節の変わり目には、そんな夏の食生活を少しずつ見直していきたいですね。
「肺を潤す」という働きも
今回参考にした薬膳の資料には、いちじくに**「潤肺止咳(じゅんぱいしがい)」**という働きも記されています。
薬膳では、秋は「肺」と関わりの深い季節。
空気が乾いてくると、喉などの乾燥も気になってきます。
梨にも「肺を潤す」という考え方がありましたが、いちじくにも潤いという視点があります。
ただし、同じ「秋にうれしい食材」でも、五性や帰経、働きは同じではありません。
梨か、いちじくか。
「どちらが体にいい?」ではなく、
今日はどちらを食べたいかな。
そんな選び方も楽しみたいですね。
いちじくって、本当に「花がない果物」?
いちじくを漢字で書くと、
「無花果」。
「花のない果物」と書きます。
でも、本当に花がないわけではありません。
私たちが果実だと思って食べている部分の内側に、小さな花がたくさんついています。
外から花が見えないため、「無花果」という名前がついたとされています。
いちじくを切ったときに見える、あのたくさんの小さな粒。
いつもの果物にも、知らなかったことがまだまだありますね。
🥕 栄養のことも少しだけ
ここからは薬膳とは分けて、現代の栄養学からいちじくを見てみましょう。
いちじくには食物繊維やカリウムなどが含まれています。
生のいちじくと、乾燥させたドライいちじくでは、水分量が大きく違うため、同じ重量で比べたときの栄養成分やエネルギー量も変わります。
「ドライフルーツだから体にいい」とたくさん食べるのではなく、食べる量にも目を向けたいですね。
旬の時期には、まず生のいちじくをそのまま味わってみる。
そんな楽しみ方もいいと思います。
梨といちじく。秋の果物を楽しむ
みずみずしい梨。
やわらかく甘いいちじく。
どちらも秋に楽しめる果物ですが、薬膳での性質はそれぞれ違います。
梨は「涼」。
いちじくは「平」。
薬膳を知ると、
「秋にはこれを食べなければ」
ではなく、
旬の食材にもいろいろな個性がある
ということに気づきます。
スーパーに並ぶ旬のものを眺めながら、
今日は何にしようかな。
そんなふうに季節を楽しむことも、養生のひとつではないでしょうか。
🌿 今日の食卓で、一つだけ
いちじくを見かけたら、
今日はひとつ、旬の味を楽しんでみませんか?
甘さ。
やわらかな食感。
ぷちぷちとした種の感触。
「体にいいから」ではなく、
今しか味わえない季節のものだから。
そんな理由で食材を選ぶ日があってもいい。
季節をおいしくいただくことも、ゆるり養生です。
参考図書
この記事を書くにあたり、薬膳におけるいちじくの性質や働きについて、以下の書籍を参考にしました。
- 辰巳洋 主編・日本国際薬膳師会 編『早わかり薬膳素材―食薬の効能・性味・帰経』源草社
- 辰巳洋 主編『改訂新版 薬膳素材辞典―健康に役立つ食薬の知識』源草社


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